オーストラリアのLinux商標騒動

幾つかチラチラと翻訳記事が出てきているが、今月頭に米国でLinux商標を管理するLinux Mark Instituteの代理人がオーストラリアの90社の企業に200〜5000ドルのLinux商標のライセンス購入を求めたメールを送ったことからちょっとした騒動になった。まあ、進め方がまずかったということが大きいとは思うが、LMIの今のやり方にもちょっと疑問を感じるところはある。

背景を説明しないとわけわかんねー状態だと思うので、私の認識を少し書いておくが(auの事情はそんなには知らないが)、オーストラリアでは一昨年からLinux商標に関してある大きな騒動があった。Openeraという企業がLinux Australia Pty. Ltdという企業を設立し、同時にオーストラリア当局に対してLinuxの商標出願をしてしまったことに端を発する。それに対して、Linux Australiaという団体が対抗措置としてLinux商標の出願をし、最終的にはLinux Australiaの要請を受けたLinus Torvaldsが商標の所有者であると主張し、いざこざはあったものの何とかLinusが商標を持つことで確定した(のだと思う。)。

で、何となくメデタシと思ってるところに「とりあえずLMIにライセンスを払ってくれ」的な要求がきたわけで、商標を何とか防衛し、今からはLinuxを自由に使えると単純に思ってた人間には納得しがたいだろうし、そもそも唐突すぎて何が何だかわかんねーというのもあるだろう。LinusがLMIに商標管理を依託しているという経緯を理解していない人間も多いのかもしれない(このあたりは憶測だが。)。

まあ、商標に限らないが法的な手続きには金はかかるし、商標の維持、防衛にも金はかかるので、企業からライセンスとして使用料を徴収するというやり方もアリなことは確かである。

この系統の話で忘れてはならないのは米国のLinux商標である。米国でのLinux商標は全くの第三者が先に取得し、1996年にその第三者がLinuxに関わる様々な企業から莫大なロイヤリティを徴収しようと行動をとったということから、長い法廷闘争になったという経緯がある。何とか商標を取り返すことはできたわけであるが、登録料、裁判費用等の経費が馬鹿にならないことをLinux界隈の人間は思い知り、さらにオープンソースであっても商標を保護することの重要性も知ったわけである。そのころはJon “Maddog” Hallあたりが積極的に動いていたのだと思うが彼も絡んでLMIが設立されたのは、当時の混乱への反省もこめてLinux商標の保護のための資金を平たく集める仕組みを作ったということなのだろう。

ただ、オーストラリアの事象に関しては、当局は最初に出願した企業もLinux Australiaの出願もLinusの支持がないので却下という姿勢をとっていたようなので、そもそも商標を取らなくてもよかったのでわという気がしないでもない(何か理由があるのだろうか?)し、経緯的にはLMI側が大きな金銭的な負担を抱えたようにも思えない。なので、いきなり米国の問題をひきずらないはずのオーストラリアの90社の企業にライセンス購入を求めるメールを送るというのは少々乱暴ではないかと感じる。また、商標絡みで今後起きそうな問題を考えても、LMIにそんなに金銭を必要とする理由がいまいち分からない。しかしながら、まあ十分にライセンスは安いと言えば安いし、このライセンスの輪によって商標を保護するという動きが強固になるという効果もありそうなので、さほど問題だとは思わない。それにmaddogあたりがLMIにいるなら、少なくともその間はおかしな方向には向かわないだろう。まあ、突然 Linux distroを開発/配布している個人や零細なLinuxコンサル屋等に対していきなり5000ドルの請求がくるようになるという可能性はゼロではないわけだが、現実としては限りなくゼロだろう。

で、最後にちょっと気になるのは、日本でのLinux商標なのだが、日本でもけっこう派手な騒動があった挙げ句、何とかLinusが所有者であることになった。ということは、いつかLMIからライセンスを購入しろというお達しがくるのだろうか? 日本での騒動に関してはLMIは何にもしていないと思うが、仮に日本でも請求を出せば簡単に払う会社がかなりあるかもなぁ。

そう言えば、この日記を書いているのはLinux.comだな(ワラ

佐渡 秀治 について

President & CEO, OSDN K.K.
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